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※ネタバレ注意【フーガはユーガ TWINS TELEPORT TALE】伊坂幸太郎 感想

新作長編「フーガはユーガ TWINS TELEPORT TALE

どうも!イサカモです!

 

伊坂幸太郎先生の新作を読了したので感想をば。 いつも通りテンポよく読み終えることができました。時間にすると朝の6時から休憩を挟みながら午後2時ぐらい、おそらく7時間かかっていないぐらいでしょうか。

 

伊坂先生の作品はほとんど読みましたが、読み始めてから読み終えるまでノンストップの場合が多く、読んでいる間は時間を忘れてしまいます。伊坂幸太郎をこの記事で初めて知ったという方はこの記事を読んだ後、どんな作品があるのか探してみてはどうでしょうか!

 

そして気になったものがあれば是非手に取ってみることをお勧めします!

  • 本屋、書店で購入する。
  • 図書館で借りる。
  • 電子書籍 

便利な世の中です。作品との出会いにも様々なパターンがありますね。きっとその作品はあなたに素晴らしい時間を感動を感情を与えてくれると思います。では、具体的に感想に入っていきましょう。

超能力者シリーズ

私が勝手にカテゴライズしているだけですが、伊坂先生の作品には超能力を持った主人公や登場人物が何人か存在します。例を挙げると「魔王」や「モダンタイムス」がそうですね。

 

「魔王」や「モダンタイムス」の世界観は執筆当時の現代を模した雰囲気が多いと思います。…たぶん。せんな現実、リアルに近い世界観の中で超能力者が色々と活躍したり暗躍したりといった話が展開していきます。

【魔王】

魔王の主人公である安藤とその弟:潤也はそれぞれ能力を持っています。

 

安藤(兄)

能力:【腹話術】自分が思ったことを相手に喋らせることができる

 

安藤潤也(弟)

能力:【???】じゃんけんや競馬の単勝(購入した一頭の馬が1着になること)などに必ず勝つ。確率を収束させる?

 

※潤也の能力に関しては詳しく言及されていなかった気がします。 

魔王の話を主軸に伊坂先生の他作品の登場人物達がクロスオーバーで活躍するコミック版「魔王」もお勧めです!! 

コミック版は「魔王」「モダンタイムス」に限らず、「グラスホッパー」などの登場人物もクロスオーバーで登場しています。違う作品同士の交わりはわくわく感がたまらないですよね。

【モダンタイムス】

【モダンタイムス】は【魔王】から50年後、魔王で登場していた安藤潤也(弟)が亡くなって少し後ぐらいの世界、そこで起きる事件が語られている内容になっています。

 

渡辺拓海(主人公)

能力:【腹話術】物語の終盤で窮地に陥った時、能力が覚醒します。

 

緒方(魔王で登場した”ドゥーチェ”というバーのマスター?)

能力【???】大気を操る能力??【魔王】では使用した相手の呼吸を止めて死亡させたりしていました。

 

余談ですが、モダンタイムの登場人物の中で一番好きなのは”岡本猛”です。

【フーガはユーガ】に登場する双子の超能力

今回の作品「フーガはユーガ TWINS TELEPORT TALE」の双子の主人公”優我”と”風我”も一年に一度、兄弟の誕生日である9月6日にだけ2時間おきに互いの位置が入れ替わるという能力を持っています。これまた少しばかり、微妙な能超能力なんですよね…(笑)

 

好きな時に臨んだタイミングでお互いの位置が入れ替わるとかならば漫画とかにも出てきそうな能力ですが、双子の場合は一年に一度で、しかも2時間おき、強制的に入れ替わりが起こるんですよね…どちらかというと不便かな…(笑)

 

簡単に能力の具体的な内容をまとめると誕生日である9月6日であることを前提として以下のようになると思います。

  • お互いの位置が2時間おきに入れ替わる。
  • 入れ替わりの前兆として肌がビリビリと震える感覚を感じる。
  • その時身に着けている服や持っているモノなども移動する。
  • 触れていれば人間も可能
  • 入れ替わりの際、周りの人間や動物は停止していて現象を認知できない。
  • カメラなどで撮影するとコマが切り替わったように映っている。
  • (↑の補足:入れ替わり際、お互いの姿勢が異なると周りからは座→立といった感じに予備動作無しで姿勢変更したように認知される)
  • 入れ替わりの際、カメラや車などの乗り物、機械は稼働を続ける。
  • (↑から時間が止まっているわけではない)

ひとまず、一回読んでみて気づいたのはこれぐらいですね。

 

また、2時間おきに現象が起きる理由として自分たち(双子)が生まれる時、2時間ズレて生まれてきたということが理由なのではないかと双子の会話の中で言及されていました。他作品の能力もそうですが、伊坂作品に登場する超能力は基本的に地味な能力が多いですね。

 

勿論入れ替わりなど物理法則を超越したすごい能力ですけど、上記のような条件がある場合はコミックに出てくるような分かりやすい能力とは異なることがわかります。ただ、この地味な超能力が話をめちゃくちゃ、めちゃくちゃ面白くするのが伊坂幸太郎。伊坂節とでもいいましょうか、とにかくこの能力が物語にぴったりとハマるんですよ。じゃすとみーとです。

注目ポイント

最後に、私が読んでいて刺さった部分や言い回しなどをご紹介。

①あのトレーディングカードゲームが登場!

今回の話の中で”優我”があることをきっかけにカードゲームを始めるのですが、それがまさに国民的トレーディングカードゲーム遊戯王】です!!(笑)

  • 40枚のデッキを1セットとして向かい合って対戦する。
  • コンビニで販売されている。
  • 一見弱いカードでも組み合わせ次第で強い。

いや・・もしかしたらデュエルマスターズとかもありえるんでしょうか・・?(※追記:後のデュエルマスターズコラボ等から分かる通り、遊戯王ではなくデュエマでした。)

 

私が知っているカードゲームが遊戯王ぐらいで知っているルールとドンピシャだったのでそう判断したのですが…。この描写に自分もやっていたカードゲームの懐かしさを思い出しましたね。

②クロスオーバー要素

伊坂先生の作品では時折、他作品の登場人物や直接登場とはいかなくもそれに関連した話などが出てきたりします。そして、そういったクロスオーバー要素を見つけるのがファンの楽しみの一つでもありますね。

 

今回、私が読んでいて気付いたのはこの”優我”と”風我”が会話した双子の少年の台詞です。

「ユーガって伊藤さんが話していた案山子の名前と似ている」

  ※「フーガはユーガ TWINS TELEPORT TALE」 より引用

 伊坂幸太郎先生のファンならば一発で気づくこのワード、読んでいた時思わずニヤリとしてしまいました。そう、【オーデュボンの祈り】の主人公”伊藤”と喋る案山子”優午(ユーゴ)”のことですね。

 

この双子の少年たちはどこかで伊藤と接点があるんでしょうか?もしかすると【オーデュボンの祈り】で登場していたりするんでしょうか?かなり前に読んだので細かい部分は忘れてますねー。また気分が乗った時に読んでみようかと思います。

 

【オーデュボンの祈り】は何度も読みましたが、不思議なことに時間を空けるとまた読みたくなってしまうんですよね。伊坂先生の作品は基本的にどれも読みやすいですが、【オーデュボンの祈り】は特に読みやすいと感じているので、読書をあまりしないという方にもおすすめです!!

 

ちなみに好きな登場人物は”桜”です。

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

 

③好きな表現や描写

”優我”が双子の自分たちを靴と硬貨(コイン)に例えて語る兄弟の変化。

 

”優我”と”風我”は15歳になったのを機にその生活が互いに一変します。”優我”は高校に進学する一方で”風我”は中学を卒業してそのまま働くことを選択するのです。双子は15歳になるまで学校でも家でもほとんどの時間を一緒に行動し、体験を共有してきました。

 

その自分たちの事を二人合わせて一足の靴だったと”優我”は表現していました。しかし、15歳になりそれは変化していきます。”優我”は進学し高校生として過ごし、”風我”は社会に出て働いていきます。

 

もちろん兄弟の距離は物理的に開くことになりましたが、その時からお互いのつながりはより深くなったと”優我”はそれを左右の靴からコインの裏表となったと表現していました。

 

 もちろん僕と風我の仲は悪くなかった。むしろ、左右の靴よりも硬貨の裏表の方が密着度が高いように、繋がりは深くなったと感じるほどで、顔を合わせれば、自分の体験や得た情報を話した。

 

※「フーガはユーガ TWINS TELEPORT TALE」 より引用

 

別々の道をあえて歩むことによってより絆を深めた兄弟。

 

過去の自分たちを客観的に語る”優我”はその時どのような心情だったんでしょうか。具体的に書くほど考えが纏まっていないのですが、私はなんだか切ない気持ちになると同時に、その強い絆を羨むような感情になりました。

”岩窟おばさん”が兄弟との関わりに価値があるということを明言したシーン。

双子の兄弟が中学生の頃にたまたま関わったリサイクルショップのオーナーである”岩窟おばさん”。そして中学卒業後に”風我”が働く場所がこのリサイクルショップになります。

登場当初の描写からは商売にがめつく変わり者のおばさんという印象、実際兄弟の印象もそんな感じでしたね。”岩窟おばさん”の名前の由来は素性不詳でうさん臭く、よく偏屈だと言われるとかなんとか。

 

それに対して「偏屈だとか、岩窟だとか」と語呂を楽しんでいたおばさんから兄弟達の中では”岩窟おばさん”が定着したようです。そして、おそらく20歳前後になった兄弟達、彼らはある窮地を脱するための金策のために”岩窟おばさん”を頼ります。

そして、その時初めて"岩窟おばさん"人間味あふれる台詞を兄弟達に投げかけます。

おばさんは頭をゆっくりと振り、大きく溜め息を吐いた。「優我、おまえは頭がいいんだから、お金を貸すこと自体は全く問題ないことくらいは分かってるだろ。私が言ってるのは、お金の話を持ち出すのはそれなりに覚悟がいるってことだ。おまえたちとわたしとの関係は壊れるかもしれないよ、と。それを分かった上で、おまえたちが金を貸してほしいっと言ってくるのが淋しいだけでね、お金を貸すのは別にいいんだって」

 

溜め息を吐くところまではまだ”岩窟”感がありますが、その後に発した言葉は作中の中で最初で最後、”岩窟おばさん”の感情をうかがえる 唯一のシーンだと私は思っています。

 

リサイクル品を同業者と奪い合う”岩窟おばさん”。他人の免許書を現金化する伝手を持っている”岩窟おばさん”。金になる不用品を引き取り逆に処分費を要求する”岩窟おばさん”。

 

色んな姿を見せてくれた”岩窟おばさん”が兄弟との関係を少なからず大切に思っていることがわかりますね。もしかしたら、最初は双子の中学生兄弟を使える労働として利用するだけのつもりだったかもしれませんが、双子との関係はそれに留まらなかったようですね。

 

この後”岩窟おばさん”は200万円をポンと兄弟達に貸し出します。

 

男前すぎる…

まとめ

さて、設定は色々とネタバレしましたが物語の根幹には触れずに思ったことを書き上げてみました。最近はなろう作品メインで読んでいたので久しぶりに紙の本を読んだ気がします。

 

紹介したシーン以外にも魅力的な内容が詰まっている作品ですので、私の感想を読んで興味を持っていただけたら幸いです。話は変わりますが、【アイネクライネナハトムジーク】の映画が2019年に公開されるようですね!

 

おめでとうございます!!

 

少し前には【バイバイブラックバード】がBSで連続ドラマとして映像化されていましたね。城田優が女装して”繭美”を演じるとはwwこれは誰にも予想できなかったことでしょう。ドラマ自体も言い回しなどカッコよくて満足のいく内容でしたが、BGMやEDの曲がめちゃくちゃ良かったです。

 

伊坂作品の中には多く映画化、映像化されているものがあります。本を読むのが苦手という方は映画から入ってみるのもいいかもしれませんね。

 

 それでは、また次回。