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【小説家になろう】おすすめ |SF&サイバーパンク作品

はじめに

どうもみなさん。いさかもです。

今回は小説家になろうに投稿されている2つの作品(それぞれジャンルでいうとSFとサイバーパンク)の紹介動画をYouTubeに投稿したので、その関連記事となります。

 

本記事は紹介動画では伝えきれなかった、ちょっとした部分を付け加えた内容となっています。そのため動画をご覧いただいてからの方が分かりやすいかと思います。

 

まあ、動画も見てね!ということで(笑)

僕は、お父さんだから(書籍名:遺伝子コンプレックス) 著:舛本つたな 様

作品ページ▶https://ncode.syosetu.com/n0586cp/

※以下のあらすじは小説家になろうの作品ページより引用

 

遺伝子最適化が合法化され、日本人は美しく優秀であることが一般的になった。そんなご時世に、最適化されていない『未調整』の布津野忠人は、三十歳にして解雇され無職になってしまう。ハローワークからの帰り道、布津野は公園で完璧なまでに美しい二人の子どもに出会った。

「申し訳ありませんが、僕たちを助けてくれませんか?」

彼は何となく二人と一緒に逃げ回ることになり、次第に最適化された子どもの人身売買の現場へと巻き込まれていく……。


<本作の読みどころ>
現代日本でのおっさん主人公最強モノ。遺伝子操作された周りの仲間は優秀だけど、主人公はごく普通の人。だけど、とても善人だから、みんなが彼についてきて世界まで救ってしまう系のノリ。アクション要素あり。主人公が必死に頑張ってきた合気道で爽快に大活躍。そうやって心を開いていく子どもたちを養子にしちゃう話です。


www.youtube.com

名作SF映画ガタカ】を彷彿とさせる世界観

【僕は、お父さんだから】は【遺伝子調最適化】という人間の子供の遺伝子を生まれてくる前に調整することができる技術が発達した仮想日本を舞台としたSF作品です。時代背景としてはその最適化技術が日本の国民に解放され、自由に施術を受けられるようになってから35年後となっています。

 

そのため作品の中では遺伝子を最適化された人間とそうではない人間が入り乱れている状態となっており、主人公は後者、最適化を受けていない人間となっています。この時点で映画好きの方からすると往年の名作SF映画ガタカ】を思い浮かべる方もいるでしょう。私も実際に、この作品を読んでいる時にはガタカのことが思い浮かびました。特にこの作品の一章はその色が強く、遺伝子最適化をされた若い世代とそうではない(中年~高齢者の)世代(+日本以外の国々)との間にある格差や対立が描かれています。ただ、ガタカとは違い、遺伝子最適化を受けている人間は世代によって分かれている設定となっていましたね。

 

※【僕は、お父さんだから】の場合は日本においてのみ遺伝子最適化技術を開放している状況。他国は技術自体はあるものの、その技術を公開するフェーズまではいけていない。

ガタカ】あらすじ

近未来、人類は人工授精と遺伝子操作により優れた知能・体力・外見を持った「適正者」と、自然妊娠で生まれた「不適正者」に分けられていた。「適正者」たちは教育課程や社会において「不適正者」よりも優位な存在であり、両者の間には社会レベルでも個人レベルでも大きな隔たりがあった。

ヴィンセント(イーサン・ホーク)は自然な生き方を求める両親によって「不適正者」として産まれたが、生まれつき虚弱体質であるというハンデを背負っていた。「不適正者」の生きづらさを実感した両親は、弟アントン(ローレン・ディーン)を「適正者」として誕生させる。ヴィンセントは子供のころから「適正者」の能力を目の当たりにし、弟を含めた「適正者」たちには勝つことができない。それでも、度胸試しを兼ねた弟との遠泳勝負には最後の一度だけ勝つことができた。そんな彼が小さな胸に抱いた夢は宇宙飛行士になることだったが、宇宙飛行士は「適正者」のみに許された仕事で、「不適正者」には夢のまた夢、なれる可能性など皆無であることを成長するにつれ実感していく。

 

※【ガタカWikipediaより引用

ガタカを最後に見たのはずいぶんと昔なので、内容は朧気ですが、ガタカの場合は世代によって遺伝子に違いがあるという感じではなかったと記憶しています。ただ、遺伝子操作を受ける人間と受けない人間、その選択の違いの理由についはガタカの主人公の例を除いて一般的にどうなっていたか、はたして描かれていたかすら覚えていません。また時間があったら確認したいところです。

 

一方で【僕は、お父さんだから】の場合は遺伝子最適化技術が解放されて以降の若い世代はほぼ遺伝子操作をされて生まれてくるという世界観となっている。そんな中で【僕は、お父さんだから】の【主人公】布津野はその狭間で生まれたような世代で、親の選択によって遺伝子操作を受けずに生まれます。

 

ところが、布津野の世代では彼を除き、周りの同年代のほとんどが最適化を受けており、そのため同世代の中でただ一人、最適化を受けていない人間となってしまいます。彼はそんな環境で幼少期から学生時代を過ごすことになるわけですね。そして物語冒頭で30歳となった【主人公】布津野が何の因果か、遺伝子最適化技術を中心とした、国がらみの問題や事件に巻き込まれていくというところからこの作品の冒頭は始まることになります。

 

【僕は、お父さんだから】は後半になるにつれてアクション寄りの展開になっていきます。【ガタカ】はどちらかといえばSFをベースとした潜入もの、クライムサスペンス感が強いという印象がありますね。

団塊 ゆとり Z世代

まったく関係無いですが、たまたま見た【おたきんぐ/岡田斗司夫】の切り抜きのコメント欄に妙にこの作品のことが思い浮かんでしまうコメントがあったのでここで紹介しておきます。

 

内容は団塊、ゆとり、Z世代の違いについてのコメントとその返信です。ちなみに私はゆとり世代なので無意識てきに思うところがあるのかもしれません。ただ、上の世代にひどい扱いを受けたみたいな経験は無いんですけどね。

 

※【ゆとり教育ゆとり世代には学力の低下と引き換えに異常に発達した能力があります。【2013年】【岡田斗司夫/切り抜き】より引用

    コメント欄を確認しに行けばわかってしまいますが、記事内では各コメント主の名前を伏せておきます。

動画▶【ゆとり教育】ゆとり世代には学力の低下と引き換えに異常に発達した能力があります。【2013年】【岡田斗司夫/切り抜き】 - YouTube

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「ゆとり以前と以降で明確に世代的な差異を感じるのは、ゆとりは下の世代を叩かない事だな。
ゆとりが本格的にネットに参入してくる以前のネットでは「ゆとりガー」おじさんが腐る程いて、そこら中でゆとり叩きが跋扈しており大変気分の悪いものだった。」

 

「いわゆるゆとり世代の下はデジタルネイティブに匹敵する世代であり普通に俺たちより情報多くて賢いからな。」


「確かに物凄いバッシングでしたね。今のようにパワハラとか煩くなく多様性も尊重されない。マスコミも似た論調で怪物扱い。」


「ゆとりだけど
下の世代の方が賢いって最初から分かってるからじゃないかな?

でもそれが当たり前の認識としてあるから
悔しいと思わないし、
自分より優れている者より前に出ずわきまえてると言うか…」



「謙虚な私たち凄いでしょと鼻を伸ばす感じが人間的でいいと思うよ!

私はゆとり世代が終わった位に産まれました。」


「実際、言いたい放題の人間に言わせてあげているだけで偉いと思う。」

 

「下を叩かない代わりに上の世代を目の敵にするのがゆとり世代だね。芸人の業界でも第7世代とか勝手に自分らでこさえた抱き合わせ商法を武器に、中堅芸人や大御所クラスを舐めてかかるっていう。下剋上したい気持ちはわからんでもないが、実力のない人間がやっても無意味だからなぁ」

 

「そりゃあんだけ叩かれたら目の敵にもするよ」


「ゆとりが上の世代になったら下をたたき始めるに決まってんじゃん」


「人間って愚かだね」

 

「年取ったら叩き出すな」

 

「 まさに自分がこれだわ
上の世代と全く気が合わなくて世渡りが大変だった。
もう二十代後半になってだいぶ落ち着いてきたけど、相変わらず上とのコミュニケーションは苦手。
代わりに下の世代や部下には楽に接することができて、部下ができてから仕事もうまく行きだした。
その世代には世代の宿命みたいなのがあるんだろうな」


ゆとり世代がまだ若いからじゃないの?
おじさんになれば脳の機能的に意固地になるのは世代とかの問題ではないし」

 

「ゆとりが10代の頃主にネットカルチャーを牽引していたのが当時20~30代のロスジェネでこいつらがネット上で最も苛烈にゆとりを叩きまわしてたんだよなぁ。」

 

「そうかなあ?教育は関係してると思うよ
相手を尊重しないやつは軽蔑するだけ。
「下の人の盾になる」人多いよ。」

 

実際のところ紹介作品とまったく関係がないコメントなわけですが、このコメントの内容が妙に紹介作品とリンクしてしまった、いさかもです。

 

作者の方がどの世代なのかはわかりませんが、こういった世代間の差や違いが無意識的に表現されてしまうということは創作物においてよくあることだと思います。

 

【僕は、お父さんだから】の場合は遺伝子最適化が解放される以前の人間が【団塊】、その狭間に生まれた主人公が【ゆとり】、そして遺伝子最適化を受けた若い世代が【Z世代】といったふうに例のコメントを見てから重ねてみるようになってしまいました。

 

まあ実際のところは関係ないと思います。私が勝手に重ねてしまっているだけですね。

 

ですが仮に、考えてみると【ガタカ】の場合は遺伝子操作を受けた人間である【適正者】と、遺伝子操作を受けていない【不適正者】という2種類の人間が登場していました。もしかするとこの2種類の人間は【ガタカ】という映画が作られた時代、あるいは監督等の【ガタカ】の作り手の世代が抱えていた世代間の格差や違いを別の形で表現した結果なのかもしれませんね。

 

そんなわけで勝手な妄想でした。

トロル 著:舛本つたな 様

作品ページ▶https://ncode.syosetu.com/n7797gg/

※以下のあらすじは小説家になろうの作品ページより引用

 

インターネットに悪意がまき散らされている現在から100年後の未来。
インプラントされた共有脳から、他者の経験を脳にインストールし共感を深めることで、犯罪は社会から撲滅されていた。
その反面、悪意感染はより深刻な社会問題となり、保健省から『トロル』と認定された悪意感染者は殺処分の対象となる。
バクバは共有脳を持たない『脳無し』だったが、それゆえに感染への高い耐性をもち、感染エリア内の調査と殺処分を請け負う免疫屋を営んでいた。
彼が防疫官アルナナと出会い、共に神保町感染事件を追う過程で、徐々にこの共有社会の問題点へと近づいていく。

その悪意は本当に自分のものなのか?
本当の自分はどこにいるのか?

この物語は人間の悪意を問うSFクライムアクションである。

youtu.be

サイバーパンクの系譜

こちらは同作者の作品です。そして、前作【僕は、お父さんだから】から100年後が経過した日本が舞台となっています。こちらの【トロル】は少し毛色が変わって、サイバーパンクといえる内容となっています。まあ前作もサイバーパンク感があるといえばありますが…。

 

まあ話を戻しまして。

 

【トロル】は人間が本来持っている【脳】とは別に、もう1つ【共有脳】というものをインプラントによって体に埋め込むことが一般的になった日本が舞台となっています。そして【共有脳】によるメリット【犯罪率の低下等】とデメリットである【悪意の感染】をテーマに共有脳社会で生きる主人公が様々な事件や問題に直面していく作品となっています。

 

作者様自身が短編版【トロル】で触れているので間違いないですが、【トロル】は【攻殻機動隊の電脳】と【サイコパスの犯罪係数】、この2つの設定にかなり影響を受けて描かれた作品なのは想像に難くないでしょう。

 

 

ただ、それらの設定そのままではなく、細かい違いを作り、それぞれの良い部分を抽出し、関連付けさせたものとして【共有脳】と【トロル】という2つの設定を登場させています。なので個人的にはあまりその辺は気にならず、新鮮な気持ちで読み進めることができました。

 

また、【共有脳】という技術がもたらす恩恵によって発生する【人間とは何か?】そして【記憶を上書きされた人間は果たして、同じ人間だといえるのか】といった哲学的な問いを登場人物たちが直面する問題として描いたりしているので、このあたりにしっかりとサイバーパンクの系譜を感じることができる作品でもあると思います。

 

そういえばこの記事を書くにあたり【サイコパス】のwikiを見ましたが、サイコパスって【踊る大捜査線】の監督が企画したアニメだったんですね。初めて知りました。思い返してみると踊る大捜査線にはたまにサイコパスてきな犯罪者が登場していましたね。

 

映画版ではリーダーのいない犯罪組織も登場していましたし、考えてみると色々と繋がる部分が出てきます。いさかも、2021年にして【踊る大捜査線】と【サイコパス】のつながりを知る。

手紙がすんごい

紹介動画でもふれていますが、この【トロル】の二章で描かれる手紙がかなり衝撃的な内容でした。

 

一度読んだだけでは、整理ができず、何度も読み直した内容です。

 

というかその手紙の部分だけ何度も読み直したくなる、そんな魅力的な部分でもあります。この手紙というのは2章で主人公が関わることになる訳ありの少女が彼女の親(シングルマザー)にあてた手紙になります。

 

 はっきりさせたいことがある。

 あんたはもう私の母親じゃない。わたしはあんたの娘をやめた。

 

※【トロル】二章 2.5. 『利己的な遺伝子』より引用

 

これはその手紙部分の書き出しの引用になりますが、この部分だけでもかなりインパクトのある内容になっているのがわかると思います。

 

最初にこの手紙を読んだときは話の流れで読んで、すごい衝撃だけが残ったんですよね。一度読んだだけではこの手紙の内容に整理つけられなかったわけです。ですが、何度か読み直しているうちにこの手紙が複数の【役割】を持っていることがわかりました。

 

【手紙】はその書き手と目的よって【役割】が変わると思います。

 

書き手が【少年少女、あるいは男女】で目的が【恋愛成就】であればそれは【ラブレター・恋文】になりますし、書き手が【犯罪者】とかでその目的が【脅し】なら、それは【脅迫状】になるわけです。

 

それを踏まえたうえで【トロル】に登場する手紙を考えてみると、トロルの手紙はまず【娘】が【親】に向けた手紙となっています。そして目的ですが、さきほど引用した書き出しからすると【決別】です。決別の手紙にあたる名詞が思い浮かびませんが、さらにこの手紙には続きがある訳です。いわせてもらうと【決別】の要素だけではあれほどの衝撃は感じなかったでしょう。つまりこの手紙にはさらに別の目的があるわけです。

 

いってしまうと、この手紙にはさらに2つの目的があります。それは【感謝】と【殺し】です。【感謝】はわかりやすいですよね。最近はどうかはわかりませんが、私の時代は小学生の時に国語の授業などで親に向けて【感謝の手紙】を書かされたものです。まさにこの手紙は純粋なその思いが1つの目的として込められています。

 

まあまた、この【感謝】がかなり捻くれた感じで、親の元を飛び出してたくさんのクズたちを見てきた中で、クズだと思っていた親がそいつらに比べたらましなクズだったってことが分かったという内容になっています。

 

そして最後に【殺し】ですね。

 

これはいわば少女が自身の親に向けた【弔辞】です。【母親】という【役割】を【殺す】ことを目的としたもの。そして実際にこの手紙を読んだ少女の母親は【母親】として死にます。※生物学的には死にません。

 

この【決別】【感謝】【殺し】3つの要素が1つの手紙に詰まっているのが、【トロル】に登場した手紙の正体であると私は思います。3つもの【目的】があるため最初に一度読んだだけでは、その複雑さから衝撃だけが伝わった。だからなのか最初はこの手紙を読んだとき呆然となったんですよね。まるで内容の整理ができませんでした。

 

しかし、何度も読み直すほどに惹きつける何かがあり、事実、私は何度も何度も読み直したわけです。そして私なりにその正体の答えにたどり着きました。まあ、あくまで私なりの解釈なので、ほかにも様々な解釈、感想を持つ読者の方がいると思います。

 

ですが【トロル】に描かれていたこの手紙は作品の中に登場する【手紙】として【過去一番の衝撃】を私にもたらしました。ほかの人にも同じような衝撃が訪れるかどうかはわかりませんが、是非、この作品に登場する【手紙】に多くの人が触れてくれたらいいと思います。

 

なので興味がありましたら是非、今回紹介している【トロル】という小説家になろう作品読んでみてください。

 

それでは今回はこの辺で、また次回。